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「安全」と「安心」は別物なのです


*Photo; NY


最近よく目や耳にする「安全安心」ですが、これを目にするたび、耳にするたびに何やらムズムズします。


言葉が空虚になった、と言われてもう7〜8年たちますが、その傾向はますます強くなっている印象があります。何を信じていいのやら〜、はぁ〜東京音頭〜です。ついでに頑張れスワローズ!です。

と言っていても始まりません。ブランディングにおいても言葉は重要な役割を果たしてくれます。そこで、今日はこの「安全安心」を入り口に、言葉の力と役割について少々考察をしましょう。


「安全」とは客観的な事実に基づくものでなくてはならず、「安心」は人々の感情の動き、つまり主観を表現しています。もう少し詳しく言えば「安全」は提供する側の責務である一方、「安心」は提供される側の感情で、別軸に存在する言葉です。

ですから、安全であれば安心、という図式は必ずしも成り立たないのです。

かつてボクが某流通大手さんのブランディングをお手伝いしている時に「安心は安さと心でできている」という素晴らしいコピーを、当時お願いしていたコピーライターのAさんが生み出してくれました。メインの顧客である主婦(主夫)のみなさんへ届く、つまり共感を生み出してくれる言葉でボク自身目を開かれた思いがしました。

すごくないですか、このコピー?


当時、食品の安全性が社会的な関心事となっていたのですが、クライアントさんからのオーダーは、「とにかくうちの商品を『安心安全』と言う言葉を使ってアピールしてください」でした。

でも「安全安心」という言葉は、他社も耳タコになるくらい連呼していたし、交通機関でも工事現場でも使われている言葉で、独りよがりの掛け声に聞こえて、安全だから安心、という図式はどうにもなりたっていないよね、という話をAさんとした結果、上のコピーが生まれたわけです。

安全は上述したように供給側の責任であり義務ではあるけど、安心を感じるのは受け取る側の気持ちの話であって、そう感じてもらうための努力はまた別の話、ということですね。いくら安全です!と主張されても安心できない時にはできないし、もっと言えば、「安全安心です!」という姿勢に安全だから安心しろよ、というくらいの傲慢さを感じてしまったのです。


安心だと感じてもらえるように、しっかりとコミュニケーションすることって、とても大切で労力を要する仕事です。それは、単に言葉だけではなくて、あらゆるアティチュードから滲み出るモノですから。


このように、コミュニケーション開発の際に「わたしはこれをやってます!」「こんなにすごいんです!」と自らの立場からものを語っても届きませんし、却って鼻白むような受け取り方をされかねません。

自らの責務=提供する価値を知ってもらうこと。そして、それを受け取る人たちにどう感じてもらうか、を考え続けること、工夫し続けること。これもブランディング・コミュニケーションの楽しみの一つです。


今世界には、こうした言葉の使い方について考察するためのたくさんの良い事例が溢れています。目を、耳を凝らしてみてみると面白いですよ。『煽る言葉』ではなく、『届く言葉』をぜひ探してみてください。


写真は10年前のNY散歩のアーカイブにありました。NO IDEAと言い切るショップのウィンドー。ふふ、こう言い切られると、なんだなんだ!?って感じで魅きつけられます。ちょっとしたユーモアも感じて魅力的ですよね。コミュニケーションって、こうありたいなあ、と思います。


Stay Safe & Be Positive!で、がんばりましょーねー! 

© Copyright 2010 d.d.d. inc. & Akihiko Shaw Ishizawa
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