
*Photo; Toscana, Italy
夏が本格的になりましたね。バカンスのシーズンとなり、日常を過ごす場所とは別の場所へと思いを馳せる季節です。
今日は、先日の地域とブランドとの関係についての続きの考察です。
ブルネロ・クチネリというブランドをご存知の方は多いと思います。イタリア発の、カシミアを使った高品質の衣料を中心としたブランドです。ジャケットは50万円くらい。ボクも縁あって幾つかのアイテムを愛用させてもらっていますが、さすがの品質であり、袖を通すたびに、創業者であるブルネロさんの哲学を分かちあいたい、という軽い使命感のようなものを纏ったりします。
そのブルネロさんの哲学とはなにかを理解するためのわかりやすい事例として、本社を構えるソロメオ村の再生物語があります。ペルージャの外れにあり人口が減り続けていたソロメオ村には現在、工房があり、職人を育てるための学校があり、スポーツを楽しむ場所もあり、社員のための素敵な食堂も整っています。ブルネロさんは尊敬する人物の一人として宮沢賢治を挙げ、また日本の災害に対しても支援を提供してくれています。
ブランディングに携わるものとして、彼の考えの中でボクが特に興味を惹かれるのは、『会社を運営する仲間たちが自らも夢の共同責任者として尊敬されていると感じる必要があります。劣化が著しいと考えられている郊外が居心地の良い場所になる可能性は大いにあり、そうした場所から素晴らしい市民性や人間性の再生が始まると信じています』という部分です。
ブランドをつくっているのは社員やスタッフであり、そうした誰もが夢の共同責任者であるという意識を共有することがブランディングには欠かせない、というのは、ボク自身もこの数年特に強く感じ、プロジェクトでも強調している部分です。
そうした意識を生み出すために、土地=場所というタンジブルなものにインタンジブルな意味を持たせ、有効な装置として活用するという考え方はとてもわかりやすく、共感ができます。一方で、今は物理的に一緒にいる必要なんてなくてリモートでいいじゃん、という発想も生まれています。どちらが正しいか、という検証にはあまり意味がありません。こうした事象からあたらしい意味作りをすることができるブランドがより強力なものになってくる、ということがボクをワクワクさせます。
これからどんな価値観が生まれ、そこからどんな市民性や人間性が出現してくるのでしょう。
バカンスのシーズンではありますが、責任は取らないが金はあげるから旅行に行け、と言われたり、帰省は控えろとお願いされたり、で日々ストレスのプレゼントをいただいているような気分にもなりがちです。ここは、今自分がいる場所をじっくりと見回し、ディスタンスを保ちながら探検してみると必ず、見逃していた発見がありますよ。そうして、今はここが自分にとってのリゾート地、という毎日を送ったらどうでしょう。
Stay Safe & Be Positive で、あれはあれで悪くなかったな、と後で笑える夏を過ごしましょう!
写真は数年前に行ったトスカーナの丘からのものです。皆んな元気かなあ。ソロメオ村にも行きたいと思っていたら、少々足止めです。運輸、観光の方々の現在のご苦労も思い、なにかしら小さなことでも協力をしていきます。