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Brand はアドリブ上手


*Photo; New York Subway


草書を書く前に楷書を学べ。

ボクの好きな言葉です。別に誰が言ったわけでもないのですけど。


ボクがこんなこと言ってもなんですが、ブランディングの本をいくら読んでも、それだけで良いブランドを作ることができるわけではありません。本から得る知識はあくまで下準備。やっぱり、フィールドに出て、リングに上がって、もんどりうって、切磋琢磨して、汗をかいてようやくブランドになる道筋が見えてきます。


スポーツ、特にサッカーなどのチームスポーツはブランディングのエグゼキューション(実施)ステージの説明をするためには分かりやすいアナロジーになりそうです。


例えばサッカーでは、まずチームの特性を活かしたベースとなる戦術を構築します。強力なアタッカーがチームにいるのか、中盤で球を奪うことでゲームを動かしていくのか、などなど、手持ちの選手の個性と相手の強み、弱みを考慮して戦術を組み上げ、練習を通じてコーチと選手の間で具体的な動きをクリエイションしていきます。


その上で、不測の事態、想定できる限りの想定外(変な日本語ですが、まあ、そう言うことです)の展開への対応を検証します。

さらに、セットプレーなど、キーになりそうなプレイについてつぶし込みをしていきます。


そうして試合に臨むわけですが、当たり前の話ですが、試合時間内に全てが想定内で進むことは滅多にありません。

そうした時、頼りになるのは選手のインプロビゼーション。つまりアドリブ力です。ただ、そのアドリブが、単なる思いつきや一人の選手の個性の上にだけ立ったものだと、チームとして結果を出すことができません。あくまで決められた戦術の中で、個々人が自分の最大限のインスピレーション(ひらめき)と行動を駆使してボールを運ぶのです。


これ、ブランディングと全く一緒なんです。


ブランディングの重要なステップの一つに、ブランドマニュアル(今や呼び方はさまざまですが)の作成があります。かつてはロゴの形や色、使い方などデザイン面での規定で完結をしていたのですが、今や、ブランドが目指す姿から価値観の共有を目的とした極めて広範な内容のものを記載することになります。


ただ…、このブックをどれだけ作り込んでも、全員がブランドの確立に向けて一糸乱れずに行動することは不可能です。

ボクもクライアントさんから「これを読めば全員が同じことをして、同じクオリティのアウトプットが出来るものにしてください」と依頼をされたこともありますが、結局ブランドを作るのは人。しかも、ボクの信念で言えば、スタッフひとりひとりの方々が楽しみながら、自分の個性をそれなりに出しながらブランドづくりのプロセスを共有していくのが本当に姿だと思うのです。


ですから、ブックで規定するのは、あくまで基本事項(結構細かく規定してはいるんですけどね)。あとは実践の中でみなさんが有機的に動いてブランドを作っていくのです、とお伝えしています。もちろん、ボクも有機的に動けるようになるよう、並走をします。そうして、みなさんの実際の動きに合わせて、ブランドブックの記載に細かい修正や追記をしていきます。


サッカーの例えで言うと、試合中、サイドライン沿いを選手と一緒に駆け周り、指示を出し続ける感じですね。


*ファッションブランドなどは一人の優れたクリエイターのアイディアからブランドができていく印象がありますが、実際には、そのコンセプトを理解し体現していく店舗やPRなど、多くのスタッフの方々の活動があってこそ、ですよね。


こうして出来上がってくるブランドこそ「血肉が通ったもの」になりますし、強い。時には当初想定もしていなかったような素敵なブランドへと飛翔していくのです。


つまり、強いブランドはアドリブが上手なんです。みなさんも振り返ると、お気に入りのブランドのショップで、スタッフさんの気の利いたサービスでそのブランドがもっと好きになったこと、ありませんか。


そうした中、昨今感じることの一つに、接客業へのデジタルツール導入の難しさです。目の前に手が空いていそうな店員さんがいるのに「ご注文はスマホからお願いします」って。確かに売り上げ管理なども含めた省力化には寄与するのですが。

長い目で見たときに運営企業さんの利益になるのかも気になりますが、こうした働き方がスタンダードになっていった時に、接客が好きなひとたちの個性が埋没してしまいそうなのが個人的には心配です。

ご注文はスマホで、と言われた後に遠慮がちにでもいろいろと話をすると、彼や彼女たちの表情がガラリと変わって、先方からいろいろと話をしてくれることがままあります。こんな素敵な笑顔を封印してしまうようなデジタルの使い方にならないように、運用の上手下手でこれから数年後には接客が重要な位置を占めるカテゴリーでのブランドの様相は大きく変わってくると思います。


今日のトップの写真はニューヨークの地下鉄のワンショットです。スポーツとファッション。うまいです、美しいです。





そして、こちらの写真はニューヨークのダウタウン。ゴール下でボールを見上げる五番の選手、かなりの高齢なのですが眼光鋭くチームを鼓舞していました。かっこいい!これぞ、スポーツがくれる力です。人々に力を与えるブランドつくりに、今日も頑張ります!

ピース!

© Copyright 2010 d.d.d. inc. & Akihiko Shaw Ishizawa
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