
*Photo; Aoyama, Tokyo
何度かこのページでもテーマとして語ってきましたが、ブランディングとマーケティングの違いを、今日は「視点の違い」から説明してみます。
マーケティングは視点を外に置きます。つまり「顧客のニーズ」をしっかりと汲み取り、お客さまが必要とするものを準備する。流行りの掛け声に「お客さまの期待を超える」というのがありましたが、超えるとしても、その軌跡は顧客からの期待の延長線上にあります。
そんなこと期待してねえよ!となると、思いが先立ちすぎて顧客と握手するポイントを外してしまうわけですね。時々あります。よく知られている事例としては、ユニクロがかつて取り組んだ「野菜の販売」。なにやら過剰な機能やサービスの追加、などもこれにあたります。顧客アンケートなどを読み間違えると、よく起こる現象です。
一方、ブランディングの出発点は「ウチ」にあります。なにを為したいのか。自らの発露として築き上げたいものはなになのか、から始まります。顧客は、その築き上げるものに魅力を感じてくれる「ファン」です。
以上が基本ではありますが、社会との関わり方の違いで、ブランディングとマーケティングの様相もまた変わってきます。つまり、どんな社会の中に自分のビジネスは存在しているのか、との視点です。
近年のドイツは参考になるように思います。
世界が大きく変わる中、ドイツの政策は時に「理想主義」だと揶揄されることも多くありました。それでも、経済は良好で、環境対策と個人の年収アップが両立している国として再注目をされています。
GDPでは、ドイツが日本を抜きそうだと言う事実もありますよね。
ドイツと日本では製造業が強い、などの共通点もありますが、中小企業の厚みと地方の強さに大きな差異があります。そして、どうやらその価値観にも大きな差異があるようです。
日本ではSDGsや環境対策は「すぐには売り上げや利益には結びつかないけれど、やらなくてはならないもの」と捉えられがちです。
一方、ドイツでは環境課題に熱心に取り組む企業への好感度が高く、そのまま売上に結びつく傾向があるそうです。そこがひいては個人の年収アップと環境課題への取り組みとが両立できているという結果に結びついています。
そこには、環境保全のための行動を促すための価値観の醸成があるようです。
もちろん、ドイツ人はもともと環境意識が高かったのでは、という考えもあります。緑豊かな国土で、都市の中にも豊かな森が共存している環境をごく自然に守り続けています。一方日本では、都市部にある100年以上の樹齢を持つ木々からなる緑地帯は「経済効率が悪い」と再開発対象になっているのが現状です(再開発、って言葉もなんだかなあ、ですが)。
環境保全と便利さの追求のトレードオフはやはりドイツもありますが、「多少は不便かもしれないけど、未来のためにも環境を大切にしようよ」という意識改革が、政府の施策やメディアによる「知らせる」努力によって培われたことが大きいようです。
「知る」、そして「考える」ことってやっぱり大切です。そして、これからの時代、「知らせる」ことはブランドの役割の一つにもなっています。
環境や人権への高いコミットメントを宣言している海外のブランドがありますよね。そうしたブランドは、たとえ環境や人権への関心が低い国でもそうした発言を控えることはしません。
マーケティング以上にブランディングの意識が高いからであり、『ブランドとしての自らの使命』を自覚しているからです。
ドラッカー曰く、企業の役割とは「顧客の創造」ですが、これからの時代、ブランドの役割とは「スマートな生活(者)の創造」となることを願っています。
かと言って、頭でっかちにならず。あまり堅苦しくならず。「お前の話はつまらん!」なんて言われないよう、そのブランドらしくできるといいですよね。
もちろんテーマは環境は人権などでなくても、そのブランドが考える「良い社会へ」のテーマでいいわけですから、そこにブランドの独自性を出すことも可能です。
ブランディングのメッセージングに悩んでいる皆さんへ、ちょっとしたヒントになればうれしいです。
今日の写真は、東京青山の一角に新しく作られた緑地遊歩道の人工池。いいんです。いいんですけどねえ。作る以前に、守る、こともあっていい。そんな意識をひとりひとりが大切にできるといいですよね。みんな自然は好きなんですから。
ちなみにボクが大好きだった祖父は造園士でしたので、そこらへん、語り出したら長いです。わはは。
まだまだ、Stay Safe & Be Positive! で、素晴らしい季節と自然を楽しみましょう!
ピース!