
*Photo; NIKE & Cartier, New York
リ・ブランディングという言葉をよく皆さん使います。
今日はその意味と取り組み方についてちょっと考えてみましょう。
まず最初にお断りしてしまうと、実はボク、はあまり「リ・ブランディング」という呼び名が好きではないのです。って、今まさにリ・ブランディングのプロジェクトを検討されている方には失礼かもしれませんが。ごめんなさい。
「リ」=再度 という感じで使うのでしょうが、あんだか言い訳がましくないですか?と言うか、軽く考えているわけではな〜いですよね?と言いたくなるような。とはは。
ブランディングは終わりのない旅のようなものです。ブランドになることを目指す会社は、呼吸をするように日々ずっとやっていくこと。それを、なんだかある朝目が覚めて、「あ、ブランディング、久しぶりにしなくちゃ」なんて思い付いたような感じで。
そんなこと、ない?失礼しました。まあ、あまりそんなところにこだわることもないのかもしれませんが、うーん、気になる。でも、気持ちも、わかります。もちろん。
そんなわけで、『リ・ブランディング』。いわゆる新規の会社やサービスのブランディングとはちょっと違った視点、気配りが必要になります。
リ・ブランディングとはなにか、についての説明にも「最近なんか、調子悪いなあ」という時がやる時です、みたいなことが書いてあるものが多いようです。
でも、当たり前ですが、煮詰めているうちにカレーの辛味がちょっと足りなくなったからとカレー粉を足すのとは訳が違います。
リ・ブランディングこそ、その「課題」と「目的」を明確にする必要があります。それなりの歴史を持った会社、商品をテコ入れするのですから、辛味を足すのか、マイルドにするのか、あるいは、ルーを別盛りにしてトッピングを増やすのか、とか?でも、いきなりパスタ屋さんになります、ではやりすぎですよね。
と言うように、限られた選択肢の中で最適解を出す必要があります。それでも、過去に引きずられすぎると、単にカレー粉を足しただけになってしまう。(この例え、わかりやすいですか?)
ファッションブランドはわかりやすいかもしれませんね。
老舗のファッションブランドは、チーフデザイナーが変わることによって、大きくテイストが変わることがままあります。
近年ではチーフデザイナーとは呼ばずに、クリエイティブ・ディレクターとされ、デザインのみならず、コミュニケーションやその他の職域までディレクションをするケースが多くあります。
このシステムの嚆矢とされているのが、旧態依然としたブランドとして輝きを失っていたグッチを窮地から救ったトム・フォード。挑発的とも言えるセクシャルなアピールを提案し、一大ブームを起こしました。
そして、それに続いたのがルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブス。日本の画家、村上隆さんとのコラボレーションにより、高価なバッグにポップな花柄キャラクターを描いて世の中を驚かせましたが、こちらも大ヒットしました。いわゆるストリートとの融合により、若者のファンを爆発的に増やし、その後のルイ・ヴィトンの快進撃は言うまでもありません。
ここで大切なのはトム・フォードも、マーク・ジェイコブスもブランドを引き継いだ時に、膨大なアーカイブを研究し、ブランドの歴史を徹底的に研究しているということです。その上で、「なにを残すのか」「何を捨てるのか」。そして「なにを新たに加えるのか」を徹底的に検証しています。
この中で最もキーとなるのが「何を捨てるのか」。
歴史のある会社であるほど、捨てることにはさまざまな障害が立ちはだかります。実務レベルで言うと、社内の反発や抵抗に対する対処が必要になることが当然発生します。その例を書くだけでも大変な量になりますので割愛しますが、この「捨てる勇気」が第一ステップです。
そして、「何を足すのか」。ここは、最終的には、トム・フォードやマーク・ジェイコブスのようなディレクター(=ブランディング責任者)のクリエイティビティによるところが大きいわけですが、過去=資産を理解しながら、その上に新しい城を立てる地道な作業が必要になります。
では、いわゆる新規のブランディングはどう違うのか。
新規の場合、ヴィジョンやパーパス、つまりやりたいことをベースに積み上げていくので「捨てるもの」がありません。
そして、「足す=新たな方向性」を考える時にも過去=資産を意識する必要がありません。
だからこそ、実はリ・ブランディングといわれるプロジェクトの方が新規のブランド立ち上げよりも何倍も難しいのです。
その難題を成功裡に収めるためには、とにかく「課題」をしっかりと明確に持ち、共有すること。間違いなく、まずはそこからです。そして、その過去と向き合って、将来を積み上げてくれるプロフェッショナルをさがすこと。これにつきます。
繰り返しますが、リ・ブランディングって、ただのエンハンス(=強化、後押し)ではありません。第二の創業、くらいの覚悟で持って慎重に、大胆に進んでいきましょう。
今の日本は、おそらくそうしたことが必要な企業さんがたくさんありますよね。逆に言えば、そうしたプロジェクトがうまくいけば、日本ももっと元気になります!
さて、今日の写真は、ニューヨーク 五番街のNIKEショップから道向こうにあるカルティエの館を撮ったものです。NIKE の波打つガラスのファサード越しに、カルティエは威風堂々と構えていました。
実は、昨日から久しぶりにニューヨークに入っています。プロジェクトの再開です。やっぱりこの街の持つエネルギーはパワーをもらいますね。にこにこ。
まだまだ、Stay Safe & Be Positive! に、素晴らしい季節をご一緒に!ピース!